支援業を生業にしていれば、多かれ少なかれ、クライアントからの「解約」に向き合わないといけない場面が出てきます。成果を出せなかった、クライアントの不安・不満に気が付けなかった、といった自身の問題にはもちろん向き合わなければなりません。外部要因によって売上が大きく下がった、成果が出過ぎてインハウス化することになった、などの一見自身に原因がなさそうな解約理由も”100%自身の責任が及ばない”とは言い切れないはずです。
理由は何であれ、解約を突きつけられるというのは、心にずっしり来ます。否定されたような感覚に陥りますし、上司への報告は憂鬱ですし、目を逸らしたくなるのも理解できます。
ただ解約に直面したときに私たちがやるべきことは、気持ちを切り替え、「もっとできたことは無いだろうか?」と振り返り、既存のクライアントそして未来のクライアントで同じ後悔をしないよう準備することだけです。
解約が起こる仕組み
人間は心の中に、人それぞれサイズの異なる「バケツ」を持っています。そのバケツは、「負の要素」を水のように溜めるためのもので、いっぱいになり、溢れると「解約」の意思決定をします。
そしてそのバケツは、タイミングや状況によって、大きくもなれば、小さくもなります。その要因は、業績、個人成績、上司や部下との関係、プライベートの出来事、などです。「最近、何もなかったのに突然解約?」という場面は、すでにある程度水が溜まっていた状態で何らかの事情によりバケツのサイズが変わり、溢れた可能性があります。
また、クライアントの担当者が1名(たとえば社長のみ)の場合は、社長のバケツから水が溢れれば、解約となります。クライアントの担当者が複数人いる場合は、担当者それぞれのバケツに水が溜まっていき、ある程度の人数で溢れてしまうと、集団としての解約の意思決定がされます。
このバケツを溜める「負の要素」は、定量的に分かり易い、成果の悪化だけではありません。レスが遅い、具体的に説明してくれない、会議の開始時刻にいつも1分遅れてくる、など定性的なものも含まれます。そしてトラブルや事故のような一気に水を溜めるものもあれば、一滴分相当の些細なものもあります。
反対に、私たち支援側が良い仕事や良いクライアントワークをしていれば、バケツに水は溜まりません。そして溜まっていたとしても、行動や成果次第で、少しずつバケツの水を減らすこともできます。支援者は、その見えないバケツに水を溜めないように(迎合すべきと言っているわけではありません)、ご支援をする必要があります。
クライアントの立場に立って、過去の自分を振り返ろう
起こった「解約」について、自分の過去の振る舞いや行動を振り返るというのは、誰でも嫌なものです。一度気持ちを整理する時間が必要かもしれませんが、前を向ける準備ができたら、ゆっくりと過去の自分を振り返ってみましょう。
本音と建前は違うことを理解しよう
解約の際にクライアントが、本音、つまり本当の理由を言ってくれることは稀です。支援業に限った話ではないですが、別れの際に人は本音を教えてくれません。やっぱり言いにくいですから。となるとまずは、クライアントの解約理由は「本音ではない可能性が高い」と認識することから始めるべきでしょう。
たとえば「成果が下がったから解約でお願いします」と言われたとして、その裏には別の理由が隠れていると考えた方がいいです。クライアントから言われたままを受け取らず、隠れた本音を探す時間を取ってみることを私はおすすめします。
そして「本音は言いにくいから、建前を伝える」という、本音と建前を使い分けている場合だけでなく、クライアント自身が「本音」に気づいていない可能性があることも知っておくべきです。
人間は感情の生き物です。なんとなく担当者のことを嫌いになってしまった、なんとなく一緒にやっていける気がしなくなった。言語化されていないものだとしても、負の感情は蓄積されます。そんなときに「成果の悪化」といった使いやすい理由を見つけて、たまたま使った(=建前)だけかもしれません。
建前の裏に隠れた解約理由を読み解こうとしなければ、私たちは本当の解約理由を知ることはできません。逆にそれを知ることができれば、私たちは既存・未来のクライアントに同じ思いをさせないように、準備ができるのです。
時間軸を長くとって考えよう
もしクライアントから解約を求められているとしたら、直近で起こった”何か”だけが原因ではないと考えた方がいいでしょう。最終的にバケツの水を溢れさせた原因はそれかもしれませんが、その前から既にバケツの水は溜まっていたはずです。
解約が起こると、私たちは直近のミスやトラブル、成果の悪化に目が向きがちです。しかし私の経験上、よほど大きなトラブルは別にして、法人間の契約でそれだけで解約に至るというのは少ないように思います。むしろ日々の小さなストレスや不満・不安がクライアントに負荷をかけ、何かのきっかけでバケツから水が溢れる(=解約)。となると、解約の原因を考える際には、時間軸を長く取り、過去を遡って振り返らなければ、適切な再発防止策は練れないのではないか、と思うのです。
何がバケツに水を溜めていったのか。たった一滴の水も、繰り返し落とし続ければバケツは一杯になります。その一滴を見逃さず、向き合うことが、適切な再発防止策につながるはずです。
自分を客観視する機会を作ろう
私たちは無意識のうちに、私たちの常識や”アタリマエ”でクライアントワークを進めています。
この資料は明後日提出しよう、ここは説明を省いても分かるだろう、これはストレートに指摘すべきだろう。それはあなたの”常識”であって、クライアントにとっては”非常識”かもしれません。明後日の何時に提出してくれるんだろう?、ここの説明がないけどどういう意味だろう?ここまで言われたら流石に傷つくな…。そんな些細なことに思える常識の違いが、クライアントとの関係に亀裂を生んでいるかもしれません。
自分の常識やアタリマエというのは、自分自身では気が付きにくいものです。だからこそ、そんな時にはマネージャーや上司、同僚、後輩などの、第三者の目を借りてみませんか?
第三者と一緒にクライアントワークを振り返ることは、自分の常識を疑うきっかけになるはずです。この資料は明後日の何時に提出するのかまで言わないとクライアントは不安になるよ、この説明はもう少し具体的にしてあげないと意図が正しく伝わらないよ、この表現はクライアントを傷つけてしまうから別の表現の方がいいね。そんなアドバイスをもらいやすい環境が、チームで働くメリットのひとつです。有効活用しない手はないでしょう。
あの解約があったから今の自分がある、と思えるように
どんな理由や言い訳があったとしても、支援業にとって「良い解約」なんてものは存在しません。外部要因でクライアントの売上が下がったとしても、元々相性の良くないお客さんだったとしても、です。外部要因で売上が下がる前に予測し、準備に動けませんでしたか?相性の良くないお客さまを断るカードを持っておくことはできませんでしたか?過去に違う選択をしていたら、まったく違う結果だったかもしれません。
面白い仕事をしたい、やりがいのある仕事をしたい、私にしかできない仕事をしたい。採用に携わっているとこんなフレーズをよく聞きます。反対に、面白い仕事ができなかった、この仕事にはやりがいがない、私じゃなくてもこの仕事はできる。そんなセリフを最後に、この業界から去っていく人もよく見ます。
人それぞれ事情があるので、すべてを否定するつもりは全くありません。ただこの支援業という仕事は、自分のレベル相応の仕事が任せられるものです。解約が発生した、やりたい仕事ができなかったということは、つまりそういうことなのです。そして面白い仕事、やりがいのある仕事、私にしかできない仕事をするためには、それ相応までにレベルを上げるしか道はありません。
「雨が降っても自分のせい」
これは松下幸之助の有名な言葉です。
何が起こっても自分のせい。どんな解約でも、自分にも何かしら原因があるはずと自責思考で考えれば、レベルアップする機会となります。「解約」をレベルアップの絶好の機会(=チャンス)です。解約から学び、レベルを上げることができれば、面白い仕事、やりがいのある仕事は巡ってくるでしょう。
あの解約があったから、今、私にしかできない仕事ができている、と将来思えるように、すべての解約を「学びの機会」と捉えるべきなのです。そして”すべて解約”とは、あなたのものだけでなく、周りで切磋琢磨する仲間の解約も、学びの対象として含まれています。
最後に
私たちのチームが、すべての解約に対してこのように向き合えているのかでいえば、正直まだまだ課題は多いです。そもそもたった3人の小さなチームですので、解約が発生することなんてほぼない(ゼロではないが、年に1~2件?あるかないか程度)のですが、チーム全員で「解約」に対してこのように向き合おうとしているのがアルテナという会社です。
会社を成長させる、私たちの価値を高める。そこを目指したときに、小手先のテクニックで解約を防ぐのではなく、向き合うのがしんどかったとしても、目を背けず正しく向き合えるチーム・個人を増やしていくことが、何よりも大事だと思うのでした。
長々と書いてしまったので最後に要約します。解約に向き合える準備ができたら、必ず振り返ること。振り返る際は、本音と建前を考える、時間軸を長く取る、客観視すること。そしてこの機会から学び、既存のクライアントや未来のクライアントで同じ後悔をしないよう、準備をすること。解約を次につなげることができるなら、面白くてやりがいのある仕事はいくらでも回ってくるので。
「解約」ひとつに対しても、こだわりが強すぎたり、細かく考えすぎたりして、周りからは無駄だと言われる部分が、私たちには多いです。けれどそのこだわりが私たちの”強み”であり、クライアントへの”価値”になると信じて、これからもチームの成長にコミットしていきたいと思います。